エリーニュス

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ウィリアム・アドルフ・ブグローの1862年の絵画『オレステースを責める復讐の三女神』。クライスラー美術館所蔵。

エリーニュス古代ギリシャ語: Ἐρινύς, Erīnys)は、ギリシア神話に登場する復讐の女神たちである。複数形でエリーニュエス古代ギリシャ語: Ἐρινύες, Erīnyes)、またはフューリズFuries、単数形はフューリーFury))とも称する。日本語では長母音を省略してエリニュスエリニュエスとも呼ぶ。

古くは数が不定で、多数からなる女神であったと考えられるが、後代の神話では、アレークトー(止まない者)、ティーシポネー(殺戮の復讐者)、メガイラ(嫉妬する者)の三女神に整理された。親殺しや偽誓の罪に対する「復讐の女神たち」として知られる。オリュンポスの神々とは異なる祭祀を受けた。

概説

神話によればクロノスウーラノスを襲って去勢したとき、ウーラノスの傷口から血が大地母神の上にしたたり落ち、そこからエリーニュスとメリアスたちが生まれたという。メリアスは、トネリコのニュムペーである(複数形はメリアデス)。

エリーニュスは冥府にあるエレボスに住み、頭髪は、頭は、身体は炭のように黒く、コウモリの翼を持ち、血走った目をした老女の姿をしている。手には青銅の鋲のついた鞭を持ち、これで打たれた者はもがき苦しんだ末に死ぬ。エリーニュスたちは恐るべき女神であり、本当の名前を出すことははばかられるため、エウメニデス(慈しみの女神たち)と呼ばれる。

初期には、母親に対する侮辱や暴行に対する復讐を司っていたと考えられ、訴えに応じて町から町へ、国から国へと罪を犯した者を追跡し、情け容赦なく罰する神と考えられた。時代が下ると、若者の老人に対する無礼、主人の客人に対する非礼、権力者の嘆願者に対する横柄な態度などについても、追及するようになった。

ギリシア神話のよく知られるエピソードでは、オレステイア三部作の中の第三曲『慈しみの女神たち』に出ている[1]。母イオカステーの死の原因となったオイディプーステーバイ攻めの七将の伝説で母エリピューレーを殺したアルクマイオーンや、トロイア戦争後にクリュタイムネーストラーを殺したオレステース(オレステースが殺したのは情夫のアイギストスだけで、クリュタイムネーストラーは裁判にかけたともいわれる)を追跡して狂気に追いやった。

エリーニュスの信仰は特にアテーナイに広がっているが、アテーナイにあるアレイオス・パゴスの近くに彼女たちの神殿があった[2]

ローマ神話での対応

ローマ神話においては、フリアエFuriae, 「狂乱」を意味するフロールが語源[3])またはディーラエDirae)を、エリーニュスに対応させた。

アエネーイス』第4巻の注釈の中でセルウィウスは、復讐の女神たちが棲む領域で異なる呼び名となると述べ、地上ではフリアエ、冥界ではエウメニデス、天上ではディーラエになるとした。

出典

  1. ^ 呉茂一『ギリシア神話(上)』新潮文庫、353頁。
  2. ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話』 青土社 1982年、255頁。
  3. ^ マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル 『ギリシア・ローマ神話事典』 大修館書店 1988年、156頁。

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