1987年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)優勝決定戦の第84回ワールドシリーズ(84th World Series)は、10月17日から25日にかけて計7試合が開催された。その結果、ミネソタ・ツインズ(アメリカンリーグ)がセントルイス・カージナルス(ナショナルリーグ)を4勝3敗で下し、63年ぶり2回目の優勝を果たした。
両チームの対戦はシリーズ史上初めて。今シリーズは、全試合で本拠地球団が勝利するという史上初の展開をたどった[3]。ツインズは、前回のシリーズ優勝時はワシントンD.C.を本拠地都市とする "ワシントン・セネターズ" として活動しており、ミネソタ州に移転してツインズとなってからは27年目で初めての優勝となる。北米4大プロスポーツリーグにおいてミネソタ州を本拠地とするチームが優勝するのは、1954年にバスケットボール・NBAでミネアポリス・レイカーズがワールドチャンピオンシップシリーズ(ファイナル)を制して以来のことだった[4]。シリーズMVPには、第1戦と最終第7戦で先発勝利を挙げるなど、3試合19.1イニングで2勝1敗・防御率3.72という成績を残したツインズのフランク・バイオーラが選出された。
試合結果
1987年のワールドシリーズは10月17日に開幕し、途中に移動日を挟んで9日間で7試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 | 試合 | ビジター球団(先攻) | スコア | ホーム球団(後攻) | 開催球場 |
10月17日(土) | 第1戦 | セントルイス・カージナルス | 1-10 | ミネソタ・ツインズ | ヒューバート・H・ ハンフリー・メトロドーム | |
10月18日(日) | 第2戦 | セントルイス・カージナルス | 4-8 | ミネソタ・ツインズ |
10月19日(月) | | 移動日 | |
10月20日(火) | 第3戦 | ミネソタ・ツインズ | 1-3 | セントルイス・カージナルス | ブッシュ・スタジアム |
10月21日(水) | 第4戦 | ミネソタ・ツインズ | 2-7 | セントルイス・カージナルス |
10月22日(木) | 第5戦 | ミネソタ・ツインズ | 2-4 | セントルイス・カージナルス |
10月23日(金) | | 移動日 | |
10月24日(土) | 第6戦 | セントルイス・カージナルス | 5-11 | ミネソタ・ツインズ | ヒューバート・H・ ハンフリー・メトロドーム |
10月25日(日) | 第7戦 | セントルイス・カージナルス | 2-4 | ミネソタ・ツインズ |
優勝:ミネソタ・ツインズ(4勝3敗 / 63年ぶり2度目) |
第1戦 10月17日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
4回裏、ダン・グラッデンの満塁本塁打でツインズのリードが6点に広がる(1分9秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
セントルイス・カージナルス | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 5 | 1 |
ミネソタ・ツインズ | 0 | 0 | 0 | 7 | 2 | 0 | 1 | 0 | X | 10 | 11 | 0 |
- 勝利:フランク・バイオーラ(1勝)
- 敗戦:ジョー・マグレーン(1敗)
- 本塁打
MIN:ダン・グラッデン1号満塁、スティーブ・ロンバードージー1号2ラン - 審判
[球審]デーブ・フィリップス(AL)
[塁審]一塁: リー・ウェイヤー(NL)、二塁: グレッグ・コスク(AL)、三塁: ジョン・マクシェリー(NL)
[外審]左翼: ケン・カイザー(AL)、右翼: テリー・テイタ(NL) - 試合開始時刻: 中部夏時間(UTC-5)午後7時35分 試合時間: 2時間39分 観客: 5万5171人
詳細: Baseball-Reference.com
第2戦 10月18日
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
セントルイス・カージナルス | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 2 | 0 | 4 | 9 | 0 |
ミネソタ・ツインズ | 0 | 1 | 0 | 6 | 0 | 1 | 0 | 0 | X | 8 | 10 | 0 |
- 勝利:バート・ブライレブン(1勝)
- 敗戦:ダニー・コックス(1敗)
- 本塁打
MIN:ゲイリー・ガイエティ1号ソロ、ティム・ロードナー1号ソロ - 審判
[球審]リー・ウェイヤー(NL)
[塁審]一塁: グレッグ・コスク(AL)、二塁: ジョン・マクシェリー(NL)、三塁: ケン・カイザー(AL)
[外審]左翼: テリー・テイタ(NL)、右翼: デーブ・フィリップス(AL) - 試合開始時刻: 中部夏時間(UTC-5)午後8時25分 試合時間: 2時間42分 観客: 5万5257人
詳細: Baseball-Reference.com
第3戦 10月20日
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
ミネソタ・ツインズ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 5 | 1 |
セントルイス・カージナルス | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | X | 3 | 9 | 1 |
- 勝利:ジョン・テューダー(1勝)
- セーブ:トッド・ウォーレル(1S)
- 敗戦:フアン・ベレンガー(1敗)
- 審判
[球審]グレッグ・コスク(AL)
[塁審]一塁: ジョン・マクシェリー(NL)、二塁: ケン・カイザー(AL)、三塁: テリー・テイタ(NL)
[外審]左翼: デーブ・フィリップス(AL)、右翼: リー・ウェイヤー(NL) - 試合開始時刻: 中部夏時間(UTC-5)午後7時33分 試合時間: 2時間45分 観客: 5万5347人
詳細: Baseball-Reference.com
第4戦 10月21日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
4回裏、トム・ローレスの3点本塁打でカージナルスが勝ち越しに成功(1分28秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
ミネソタ・ツインズ | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 7 | 1 |
セントルイス・カージナルス | 0 | 0 | 1 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | X | 7 | 10 | 1 |
- 勝利:ボブ・フォーシュ(1勝)
- セーブ:ケン・デイリー(1S)
- 敗戦:フランク・バイオーラ(1勝1敗)
- 本塁打
MIN:グレッグ・ギャグニー1号ソロ
STL:トム・ローレス1号3ラン - 審判
[球審]ジョン・マクシェリー(NL)
[塁審]一塁: ケン・カイザー(AL)、二塁: テリー・テイタ(NL)、三塁: デーブ・フィリップス(AL)
[外審]左翼: リー・ウェイヤー(NL)、右翼: グレッグ・コスク(AL) - 試合開始時刻: 中部夏時間(UTC-5)午後7時29分 試合時間: 3時間11分 観客: 5万5347人 気温: 47°F(8.3°C)
詳細: Baseball-Reference.com
第5戦 10月22日
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
ミネソタ・ツインズ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | 6 | 1 |
セントルイス・カージナルス | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | X | 4 | 10 | 0 |
- 勝利:ダニー・コックス(1勝1敗)
- セーブ:トッド・ウォーレル(2S)
- 敗戦:バート・ブライレブン(1勝1敗)
- 審判
[球審]ケン・カイザー(AL)
[塁審]一塁: テリー・テイタ(NL)、二塁: デーブ・フィリップス(AL)、三塁: リー・ウェイヤー(NL)
[外審]左翼: グレッグ・コスク(AL)、右翼: ジョン・マクシェリー(NL) - 試合開始時刻: 中部夏時間(UTC-5)午後7時42分 試合時間: 3時間21分 観客: 5万5347人
詳細: Baseball-Reference.com
第6戦 10月24日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
5回裏、ドン・ベイラーの2点本塁打でツインズが同点に追いつく(1分17秒) |
6回裏、ケント・ハーベックの満塁本塁打でツインズがリードを5点に広げる(1分15秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
セントルイス・カージナルス | 1 | 1 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 11 | 2 |
ミネソタ・ツインズ | 2 | 0 | 0 | 0 | 4 | 4 | 0 | 1 | X | 11 | 15 | 0 |
- 勝利:ダン・シャッツェダー(1勝)
- 敗戦:ジョン・テューダー(1敗)
- 本塁打
STL:トム・ハー1号ソロ
MIN:ドン・ベイラー1号2ラン、ケント・ハーベック1号満塁 - 審判
[球審]テリー・テイタ(NL)
[塁審]一塁: デーブ・フィリップス(AL)、二塁: リー・ウェイヤー(NL)、三塁: グレッグ・コスク(AL)
[外審]左翼: ジョン・マクシェリー(NL)、右翼: ケン・カイザー(AL) - 試合開始時刻: 中部夏時間(UTC-5)午後1時00分 試合時間: 3時間4分 観客: 5万5293人
詳細: Baseball-Reference.com
第7戦 10月25日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
3回裏、カービー・パケットの打球を中堅手ウィリー・マギーが好捕し長打を阻止(42秒) |
5回裏、パケットの適時二塁打でツインズが同点に追いつく(1分6秒) |
その後ドン・ベイラーの左前打で二塁走者ゲイリー・ガイエティが勝ち越し点を狙い、ホームへ突入するも憤死(1分22秒) |
6回表、フランク・バイオーラが一塁走者トム・ハーを牽制で誘い出しアウトに仕留める(1分45秒) |
6回裏、グレッグ・ギャグニーの適時内野安打でツインズが勝ち越し(1分2秒) |
バイオーラは8回2失点の好投(39秒) |
9回表、ジェフ・リアドンがマギーを三ゴロに打ち取り試合終了、ツインズの優勝が決定(1分29秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
セントルイス・カージナルス | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 6 | 1 |
ミネソタ・ツインズ | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 1 | X | 4 | 10 | 0 |
- 勝利:フランク・バイオーラ(2勝1敗)
- セーブ:ジェフ・リアドン(1S)
- 敗戦:ダニー・コックス(1勝2敗)
- 審判
[球審]デーブ・フィリップス(AL)
[塁審]一塁: リー・ウェイヤー(NL)、二塁: グレッグ・コスク(AL)、三塁: ジョン・マクシェリー(NL)
[外審]左翼: ケン・カイザー(AL)、右翼: テリー・テイタ(NL) - 試合開始時刻: 中部夏時間(UTC-5)午後7時26分 試合時間: 3時間4分 観客: 5万5376人
詳細: Baseball-Reference.com
アメリカンフットボールのシーズンへの影響
今シリーズでは、土曜日・日曜日の試合がツインズの本拠地ヒューバート・H・ハンフリー・メトロドームで開催された。この競技場は野球専用球場ではなく、アメリカンフットボールでも使用され、NFLのミネソタ・バイキングスやカレッジフットボールのミネソタ・ゴールデンゴファーズ(ミネソタ大学ツインシティー校)も本拠地としていた。アメリカ合衆国では9月に入る頃からアメフトのシーズンが開幕し、主に土曜日にカレッジフットボールが、日曜日にNFLの試合が行われる。そのため、今シリーズの開催に際し、アメフトの試合で日程や開催地の変更が相次いだ。
- 10月17日(土)
- ゴールデンゴファーズがインディアナ・フージャーズ(インディアナ大学ブルーミントン校)を迎えて試合を行う予定だったが、開催日を前日16日に前倒しした。このシーズンのゴールデンゴファーズは開幕から5連勝中と好調なうえ、インディアナ戦は卒業生らを招いて歓待する "ホームカミング" の試合でもあった。しかし、試合に向けての盛り上がりはツインズのシリーズ進出の影に隠れ、前年と比べて今ひとつとの声が学内であがった[5]。試合はゴールデンゴファーズが17-18で敗れ、シーズン初黒星を喫した。
- 10月18日(日)
- NFLのシーズン第6週、タンパベイ・バッカニアーズ対バイキングス戦がメトロドームで開催予定だった。両チームは同じNFC中地区(当時)に在籍しているため、レギュラーシーズンではホーム・アンド・アウェーで2回対戦する。この年は1回目の対戦がメトロドームで、2回目の対戦が11月15日にバッカニアーズの本拠地タンパ・スタジアム(フロリダ州タンパ)で組まれていた。そのため両チームは2試合の開催地を入れ替え、10月18日の試合をタンパ・スタジアムで、11月15日の試合をメトロドームで行うことにした[6]。10月18日はバッカニアーズが20-10で勝利し、11月15日はバイキングスが23-17で雪辱した。
- 10月24日(土)
- この日、ゴールデンゴファーズはオハイオ州コロンバスへ遠征し、オハイオステート・バックアイズ(オハイオ州立大学)と敵地オハイオ・スタジアムで対戦した。したがってシリーズ第6戦のメトロドーム開催による影響はなかった。シリーズの全米テレビ中継を行うABCは、もしシリーズが5戦以内で決着した場合、消滅した第6戦の代わりにこのゴールデンゴファーズ対オハイオステート戦を放送する予定だった[7]。
- 10月25日(日)
- 前週同様、この日もメトロドームでは元々バイキングスの試合が組まれていた。この日の対戦相手はデンバー・ブロンコスだった。ブロンコスはバッカニアーズと違いAFC西地区在籍のため、この年バイキングスとの試合は1試合しか組まれておらず、前週のような開催地交換ができない。そのため、この試合は開催日を翌26日に変更した[8]。メトロドームを所有・管理するメトロポリタン・スポーツ施設委員会とバイキングスは、ワールドシリーズとバイキングスの試合が重なった場合「必要に応じて(if necessary)」前者を優先する、という条件で利用契約を締結していたため、バイキングスGMのマイク・リンは同日2競技開催の可能性を示唆していたが[6]、結局これは実現しなかった。バイキングスは34-27でブロンコスに勝利した。
- この試合のテレビ中継は、当初の予定通り25日開催の場合はNBCが行うが、26日に変更された場合は放映権がABC『マンデーナイトフットボール』(MNF)へ移ることになった[9]。MNFは当日、バイキングスの本拠地ミネソタ州ミネアポリス・セントポール都市圏とブロンコスの本拠地コロラド州デンバーでのみブロンコス対バイキングス戦を、残りのアメリカ合衆国内ではロサンゼルス・ラムズ対クリーブランド・ブラウンズ戦を放送した。MNFが放送地域を分けて2試合を同時中継したのは、これが初めてだった[10]。
脚注
注釈
- ^ 殿堂入りは指導者としてではなく、外野手としての功績が評価されてのもの。
- ^ 殿堂入りは指導者としてではなく、二塁手としての功績が評価されてのもの。
出典
- ^ "World Series Television Ratings," Baseball Almanac. 2019年8月17日閲覧。
- ^ Rick Hummel, "What a wild ride the Cardinals took in 1987," stltoday.com, August 14, 2017. 2019年8月17日閲覧。
- ^ Steve Wulf, "SWEET MUSIC," Sports Illustrated Vault, November 2, 1987. 2020年8月9日閲覧。
- ^ Ira Berkow, Special to the New York Times, "In Minneapolis, Hankies and Hysteria," The New York Times, October 16, 1987. 2020年8月8日閲覧。
- ^ a b Fred Mitchell and Ed Sherman, Chicago Tribune, "St. Louis Cardinals manager Whitey Herzog is...," Chicago Tribune, October 20, 1987. 2020年8月8日閲覧。
- ^ Jim Sarni, Staff Writer, "DOME WILL SHAKE, RATTLE; CAN BROADCASTERS ROLL?," Sun-Sentinel, October 17, 1987. 2020年8月8日閲覧。
- ^ Ed Sherman, Chicago Tribune, "VIKINGS CELEBRATE BY TOPPLING BRONCOS," Chicago Tribune, October 27, 1987. 2020年8月8日閲覧。
- ^ Fred Mitchell and Ed Sherman, Chicago Tribune, "If the Minnesota Vikings-Denver Broncos NFL game...," Chicago Tribune, October 21, 1987. 2020年8月8日閲覧。
- ^ The Associated Press, "N.F.L. WEEK 9; Bears-Dolphins Postponed," The New York Times, October 27, 1997. 2020年8月8日閲覧。
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、1987年のワールドシリーズに関連するカテゴリがあります。
- MLB.com Postseason History(英語)
- Baseball Almanac(英語)
- Baseball-Reference.com(英語)
- 動画共有サイト "YouTube" にMLB公式アカウントが投稿した試合映像
- 第7戦:1987 World Series, Game 7: Cardinals @ Twins
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