イヌホオズキ

イヌホオズキ
Solanum nigrum
Solanum nigrum(2005年9月21日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : 真正キク類I Euasterids I
: ナス目
: ナス科 Solanaceae
亜科 : Solanoideae
: Solaneae
: ナス属 Solanum
: イヌホオズキ S. nigrum
学名
Solanum nigrum
L.[1]
英名
black nightshade
亜種
  • S. n. subsp. nigrum
  • S. n. subsp. schultesii

イヌホオズキ(犬酸漿; 学名: Solanum nigrum)は、ナス科ナス属植物バカナスとも呼ばれ[2]ホオズキナスに似ているが役に立たないことから名付けられた[2]

リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[3]

形態・生態

はまっすぐに立ち、よく分枝して、高さは最大90cm[4][2]になる。まばらに短い毛を生じるが、無毛のこともある。

は長さ3-10 cm[4][2]で、基部には1-5cmの翼を持つ葉柄がある。葉は広卵形[2]、先端は鈍いかわずかに突出し、基部は丸いかくさび状。縁はなめらかか、波状の鋸歯[4][2]がある。葉質はかさついた感触で、葉の両面に短い毛を有する(が個体差は大きい)。発芽したばかりの葉はナスやトウガラシと若干類似する。

茎の途中から花柄を出し、その先端に一見すると一点から複数が周りに広がる散房状に4-8個[2]をつける。花は白いナス状の花びらから、黄色いおしべが突き出している。萼(がく)は杯状で浅く5裂する。花冠は深く5裂して反り返る。

果実は未熟なときは青く、小さいトマトのようである。熟すと直径0.7-1 cm[4][2]、色は黒く光沢はない[2](個体にもよる)。種子は2 mm程度である。イヌホオズキの仲間は互いによく似ており区別が難しい。全草にソラニンを含むため、食べられない。

分布・生育地

世界の温帯から熱帯にかけて広く分布する。日本では史前帰化植物と考えられていて、日本全土に分布する。

主に道端民家先などに生息する。一般的な家庭の庭にも生え、雑草として家主を悩ます。

人間との関わり

全草にソラニンを含む有毒植物である。人体にとって大変に有害である。しかし熱帯では全草を煮て食べる地域がある[5](例: ケニアキクユ人[6])。

花言葉は「嘘つき」。

諸言語における呼称

  • 英語: black nightshade[5] ブラックナイトシェード

アジア

インド:

  • タミル語: மணித்தக்காளி (maṇittakkāḷi マニッタッカーリ)、மணத்தக்காளி (maṇattakkāḷi マナッタッカーリ)[7] - 文字通りには〈数珠のトマト〉を意味する。
  • ヒンディー語: मकोय (makoya)

バングラデシュ・インド:

インドネシア:

中国:

アフリカ

ケニア:

  • キクユ語: inagu イナグ(複数形: managu マナグ

近縁種

ナス属Solanum)はナスやトマトをも含む大きな属であり、形態的には多様である。その中で、本種にとてもよく似たものはいくつかある[4][9]。区別はなかなか難しい。

  • オオイヌホオズキ(スペイン語版) Solanum nigrescens
  • アメリカイヌホオズキ Solanum ptychanthum
  • テリミノイヌホオズキ(英語版) Solanum americanum
  • ケイヌホオズキ(英語版) Solanum sarrachoides

日本の在来種では、テリミノイヌホオズキ(英語版)はやや葉が大きく、花や種子はやや小さい。明確な区別点は、本種では花序が散房状に近くはあるが、その基部をよく見ると、軸の上で互いにややずれて出るのに対して、その部分がごく短く、完全に散房状に見える点である。九州以南に分布する。現在では、昭和に発見されて帰化したアメリカイヌホオズキなどを見ることが多い。

  • オオイヌホオズキ(スペイン語版)
    オオイヌホオズキ(スペイン語版)
  • アメリカイヌホオズキ
  • テリミノイヌホオズキ(英語版)
    テリミノイヌホオズキ(英語版)
  • ケイヌホオズキ(英語版)
    ケイヌホオズキ(英語版)

脚注

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注釈

  1. ^ リュウキと読むと、イヌホウズキから得る漢方薬の成分のこと[8]

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Solanum nigrum L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2016年8月17日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i 平野、林、門田 2013, p. 437
  3. ^ リンネ 1753, p. 186
  4. ^ a b c d e 畜産技術協会 1995, p. 18, 写真で見る外来雑草
  5. ^ a b 熱帯植物研究会 1996, p. 456
  6. ^ Leakey 1977, p. 1342
  7. ^ Winslow 1862, p. 840
  8. ^ コトバンク, 『世界大百科事典』第2版
  9. ^ 植村修二ほか(編著)『日本帰化植物写真図鑑 : Plant invader 500種 第2巻』 2巻、全国農村教育協会、2010年、218頁。 ISBN 978-4-88137-155-8

参考文献

主な執筆者の順。

  • 北村四郎、村田源、堀勝『原色日本植物図鑑 草本篇1 合弁花類』(改訂版)保育社〈保育社の原色図鑑〉、1980年。 ISBN 4-586-30015-9
  • “竜葵とは”. コトバンク. 『動植物名よみかた辞典』. 2022年6月13日閲覧。普及版『世界大百科事典』内で言及
  • 佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 草本 3 合弁花類』平凡社、1981年、95頁。 ISBN 978-4-582-53503-7
  • 『写真で見る外来雑草』畜産技術協会、1995年、18頁。http://nilgs.naro.affrc.go.jp/db/weedlist/title.html ISBN 4-88137-056-1
  • 難波恒雄、御影雅幸『毒のある植物』保育社〈カラーブックス〉、1983年。 ISBN 4-586-50612-1
  • 熱帯植物研究会 編『熱帯植物要覧』(第4版)養賢堂、1996年、456頁。 ISBN 4-924395-03-X
  • 平野隆久(写真)『野に咲く花 : 写真検索』林弥栄(監修)、門田裕一(改訂版監修)(増補改訂新版)、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年、437頁。 ISBN 978-4-635-07019-5
洋書
  • Leakey, L. S. B. (1977). The Southern Kikuyu before 1903. III. London and New York: Academic Press. p. 1342. NCID BA10346810. https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=I5lyAAAAMAAJ&dq=munyururu&focus=searchwithinvolume&q=nigrum . ISBN 0-12-439903-7
  • Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia, Stockholm: Laurentius Salvius. p. 186. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358205 
  • Winslow, Miron (1862). Winslow's a Comprehensive Tamil-English Dictionary. Madras: Hunt. p. 840. https://books.google.co.jp/books?id=S-RGAAAAcAAJ&printsec=frontcover&dq=a+Comprehensive+Tamil-English+Dictionary&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjPrLbOlqnoAhUCzmEKHV5vAqMQ6AEIJzAA#v=onepage&q=a%20Comprehensive%20Tamil-English%20Dictionary&f=false  (改版: New Delhi:Asian Educational Services, 1979. NCID BA00487918)

関連項目

ウィキスピーシーズにイヌホオズキに関する情報があります。
ウィキメディア・コモンズには、イヌホオズキに関連するカテゴリがあります。

外部リンク

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